故障しないクライマーになるための心構え

クライミング

何よりも怪我が怖い。
10代とは訳が違うのだ。
しかも一旦怪我をしたらビビるくらいなかなか治らない。
ボテにぶつけて出来た痣とはもうマブダチのような間柄だし、「ってかさ、うちらっていつ出会ったんだっけ?」なんて言いながらハイボールを飲み交わすくらい長い年月を共にしている腐れ縁だ。
皮膚を切り落とすくらいのガッツがなければ死ぬまで消えなさそうな勢いすら感じている。
できることなら今すぐ出て行って欲しい。
こんなことなら最初から出会わなければよかった。

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怖がり過ぎくらいが丁度いい

「怖いな、嫌だな」と感じたらその感覚に素直に従ったほうがいい。

「メイ、怖くないもん」と言い張ったメイがどうなった?
「嫌だな、嫌だな」って言ってる稲川淳二がどうなった?
メイは最終的に周囲にクソほど迷惑をかけたし、淳二は最終的にお化けとタイマンを張る羽目になる。
嫌ならすぐに帰れよ、淳二。ちょっと泣いてんじゃん、淳二。

怪我をした瞬間に、数日から数ヶ月間はクライミングから強制的な離脱を余儀なくされる。
社会人からボルダリングを初め、少ない時間を捻出し上達を目指している人にとっての数週間のレストはかなりの痛手。

自分が怪我で離脱しているその間にも、ジムで一緒に登っていた仲間たちはトレーニングを重ねていく。いくらクライミングが個人スポーツだと言えどもジムでセッションする仲間たちから置いていかれることに対して焦燥感を抱かざるを得ない。
成長速度は人それぞれだと頭では理解していてもなかなか悔しい。

ボルダリングを初めてから故障歴無し

週に3日2時間〜5時間程度のクライミングを5年以上続けている。
コンペ前は集中的に登ったりもしているが、それでも故障したことは一度もない。
なぜだろうと考えた時に、「怪我しそうな課題は徹底的に避けて無理せずクライミングをしてきたから」だと自分の中で結論付けた。
インドアでは「無理のないクライミング」をモットーに緩くトレーニングをしているが、ノースフェイスカップのDiv4の予選を突破することはできる。

THE NORTH FACE CUP で予選通過するためにやったこと
国内最大級のボルダリングコンペ「THE NORTH FACE CUP 2019」に参加しました。 結果はボーダーを大幅に超えて予選を突破。 いわゆる激戦区と呼ばれるエリアから出場したのですが、今回は予選を突破するために行ったことを共有し...

怪我をしそうな課題とは何もコーディネーションのことではない。
ここでいう怪我をしそうな課題とは変則的なムーブを要求してくる課題のことである。

今まで自分がしたことのない動きをが出てくる課題は特に危険。
初めての動きをするということは、滑りの悪いタンスの引き出しを無理やり開けるようなもので、強引に引っ張ると引き出しも体も壊れてしまう。
ムーブのトレーニングとは引き出しの滑りをよくするようなもの。少しずつ身体を馴染ませたい。

不思議なことに、有名なセッターの作る課題は強度という面ではグレード相当なのだが無理な体勢を要求し関節などに負荷をかけるようなものは見られない。
強くなるための課題とただ身体に負荷をかけるだけの課題は見分けたい。
その目安となるのが、誰が課題をセットしたのか、ということである。
個人的には、濱田健介さんや一宮大介さんのセットした課題は県内だったら積極的に登りに行くようにしている。
自分のお気に入りのセッターを探すのも楽しみの一つかもしれない。

素人の作った自作課題にトライするときは注意

勉強しているセッターではなく素人の作った課題は、動きの連続性とか完全に無視した新手の拷問みたいな体勢を要求することもある。
そして要求に応え続け頑張ってトライしていると最終的に肩を処刑されたりもする。

ちなみに課題を無理して続けて故障しても悪いのは全て自分である。
課題を作った人のせいにしてはいけない。

怪我をしやすい人の傾向

ジムでよく怪我をする人の登り方をみていると、少なからず共通点が見えてくる。
以下を避けるだけでも、故障のリスクはグンと減るだろう。
簡単にまとめてみた。

  • 危険なムーブを選択しがち
  • 自分の可動域を理解していない
  • 痛みを無視しがち
  • 単純に登りすぎ

危険なムーブを選択しがち

例えばヒールを深くかけてデッドポイントで距離のあるホールドを取りに行くようなムーブ。
うまく次の一手が保持できなければ膝の命を刈り取るような形でヒールを残したまま上体から落下する。
デッドポイントの技術が未熟なうちはこのようなムーブは積極的に選択するべきではない。

自分の関節の可動域を理解していない

可動域を超える無理な動きを続けていたら壊れるに決まっているだろ。

痛みを無視しがち

こういう人は医者の言うことも無視しがち。

単純に登りすぎ

登りすぎ。「今日はオープンからクローズまで登りました」とか言うやつ。超人か。
しかも平気で「7時間かけて登れました」とか言いやがる。

登る前の静的ストレッチは不要

今まで故障を一切したことはないが、登る前に静的ストレッチをしたこともない。
ジムに到着後、着替えたらいきなり登り始めている。
もちろんいきなりカチを握り倒すような課題は避けるが、基本的なムーブを要求する4級や3級をトライしている。
ちなみにスポーツ前の60秒を超える長時間の静的ストレッチは筋機能・パフォーマンスを低下させるだけではなく筋肉痛や怪我の予防効果もない。

もちろん体の柔軟性は故障のしにくさに影響する。かと言って登る前に柔軟をする必要性は故障予防としては意味がない。
柔軟は柔軟で別の日にトレーニングとして行えば良い。

故障している間の過ごし方

万が一故障してしまった場合は、完治を最優先にしたい。
肩や指先の怪我だとしても、クライミングのような高負荷のスポーツを避ければ良いだけである。
個人的にはスケボーやロードバイクをオススメしたい。ロードバイクは行ったらそのまま戻ってこなくなる可能性があるが。
どちらも体幹が自然と鍛えられるため、レストが明けてクライミングを再開しても、レスト前と比較してもそれほど自分が弱くなっているとは思わないだろう。
個人的には平気で2週間くらいレストをして自転車に乗って遊んでいるが、レスト明けはむしろ体がフレッシュになっているためか高グレードがポンポンと登れてしまったりもする。

自分の身体を熟知する

最終的には全てこの一言で片付いてしまう。
静的ストレッチは学術的に結論付けられていたとしても、それをすることで調子が上がるならば続ければいい。

他人にとっては効果のある治療法や予防法が全て自分にも当てはまるとは言えない。
自分であらゆるものを試し、その上で考えて取捨選択することが大切である。
自分で考えて取捨選択をする能力というのも、オブザベーションやクライミングギアの選択などに通じるクライミングには必要な技術なのでぜひ身に付けたい。
身体を絞りすぎたり、筋肉をつけすぎたりすることも、自分の身体のバランスを崩してしまうためにメリットは少ない。

まとめ

クライミングにしろ何にしろ誰よりも長く続けたもの勝ちである。
ハードなトレーニングを無理して重ねた結果として高グレードが登れたとしても怪我をして途中離脱した人より、怪我なく長い期間クライミングを楽しめた方がいいに決まっている。
その時の一瞬のために後先を考えないような無謀な行動は一部のクレイジーな連中に譲るとして、一般人クライマーの我々は持続性ファーストで頑張りたい。

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